医療管理実務ライブラリ by BRIDGE

電子カルテ・レセプト移行 電子カルテ データ移行 ORCA ベンダー確認

電子カルテ移行で移せる情報と移せない情報

公開 2026/07/18 更新 2026/07/18 制度基準日 2026/07/01 執筆 橋本渉(BRIDGE)
この記事で分かること
  • データ種別ごとの移行可否の一般的な傾向
  • 移行できないデータの現実的な扱い方
  • ベンダーに確認する項目
このような方向け

電子カルテの入れ替え・統合を控えたクリニックの事務長、システム担当を兼ねる管理職。

結論 — 「全部移る」を前提にしない

電子カルテの移行では、移行できるデータは一部というのが現実的な前提です。大事なのは「何が移るか」を早期にベンダーへ確認し、移らないデータをどう参照するかを先に決めておくことです。切り替え後に「見られない」と気づくのが最悪のパターンです。

データ種別ごとの一般的な傾向

データ移行の傾向備考
患者基本情報移行できることが多い氏名・生年月日・保険情報など。標準的な移行対象
病名移行できることが多いコードの対応関係の確認が必要
処方歴条件付きマスタの違いで変換精度に差が出る
カルテ記事(SOAP)条件付きテキストとして移っても、書式・構造は失われがち
シェーマ・画像・添付ファイル移行できないことが多い形式・容量・費用の制約が大きい
検査結果条件付き検査会社との連携形式に依存
文書(紹介状・同意書等)移行できないことが多いPDF等での書き出しは可能な場合あり

あくまで一般的な傾向です。実際の可否は現行・移行先の組み合わせで決まるため、必ず両ベンダーに確認してください。

移行できないデータの扱い — 3つの選択肢

  1. 旧システムの閲覧環境を残す — 参照専用で契約を縮小して残す方法。費用と期間をベンダーに確認します。カルテには保存義務があるため、閲覧手段の確保は移行計画の一部です。
  2. 書き出して保存する — PDF・CSVなどで書き出し、保管ルールを決めて参照する方法。書き出しの範囲と費用を確認します。
  3. 必要分だけ手入力する — 直近の通院患者に絞って、アレルギー・主要病名・直近処方などを新システムへ入力する方法。対象患者の基準と担当を決めて計画的に行います。

ベンダーへの確認項目

  • 移行できるデータの範囲(上の表の区分ごとに可否を)
  • 移行できないデータの書き出し可否・形式・費用
  • 旧システムを参照専用で残す場合の費用と期間
  • 移行作業の所要期間と、診療を止める時間があるか
  • 移行データの検証方法(誰が・いつ・何件を確認するか)
  • 概算費用と、費用が変動する条件

問い合わせ文の下書きは、無料の問い合わせ文テンプレートにそのまま使える形で載せています。

切り替え日の決め方

切り替え日はレセプトの締めに合わせて月初に置くのが基本です。月の途中で切り替えると、1か月分の請求が新旧2システムにまたがり、請求業務の負荷が大きく上がります。切り替え直前の週は新規の予約を抑える、紙の運用手順を用意しておくなど、現場の逃げ道も同時に設計します。

よくある抜け漏れ

  • 検査会社・薬局など外部連携の切り替え — カルテ本体に気を取られ、検査オーダーや処方箋の連携設定が漏れがちです。連携先の一覧を先に作ります。
  • 権限・マスタ設定の準備不足 — 職員アカウント、セット(定型処方等)、文書テンプレートは移行されません。稼働前の設定作業として工数を見込みます。
  • 旧システムの解約時期 — 参照が必要な期間を決めてから解約日を設定します。早すぎる解約は取り返しがつきません。
注意事項
この記事は一般的な進め方の整理であり、法的・行政的な判断を保証するものではありません。個別の要件は所管の保健所・厚生局・自治体・専門家に確認してください。